午前中は、雲一つない秋晴れだったのに、午後には山の向こうから、もくもくと滝のように雲がわいてきた。
若かりし頃、槍ヶ岳の山小屋で働いていたポニー。
「高い山では、こうやって雲がわいてくる光景はよく見る。久しぶりだな。」とつぶやく。
この辺りでは、中学校で登山をするけれど、当時、病気がちだった私は参加できず。未だに高い山に登ったことがない。
亡くなった女将(母)も、ずっと山をやっていた人だったから、「いつか一緒に槍に登ろう。あの景色、あんたに見せてあげたい。」が口癖だった。
いつか登ろう。秋の空を眺めながら、静かに思う。