2008-04-28 ● 欅ではないけれど・・・ banana 小さな点々の、新緑がまぶしい。 灰色の大きな欅の木が、 葉のない枝々を投網のように いっぱいに投げていた冬が、 その日、突然終わった。 そして、空いっぱいに、 微かな緑の空気が、欅の枝々に 刺繍のようにまつわって広がっていた。 木の下で、思わず、立ち止まって、 見上げると、やわらかな、 春の気配が、一度に、 明るい雨のように降ってきた。 (長田弘/『人はかつて樹だった』/みすず書房)