元・亀遊館の日々

野麦峠スキー場・民宿亀遊館の旧HPの日記

● 欅ではないけれど・・・

小さな点々の、新緑がまぶしい。

灰色の大きな欅の木が、  葉のない枝々を投網のように いっぱいに投げていた冬が、  その日、突然終わった。 そして、空いっぱいに、  微かな緑の空気が、欅の枝々に 刺繍のようにまつわって広がっていた。 木の下で、思わず、立ち止まって、 見上げると、やわらかな、  春の気配が、一度に、 明るい雨のように降ってきた。 (長田弘/『人はかつて樹だった』/みすず書房)