どこまでも続く一本の道。その両側に広がる一面の緑の麦畑。
緑の中に、赤い点々。なんだろう・・・あぁ、そうか。ひなげしの赤。
学生時代、西洋美術史の授業で見た、そんな一枚の写真に心を奪われた。
フランスからピレネーを越えて、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂まで続く巡礼路の1コマ。
田舎道を小さな教会を巡りながら歩くその場所に、ぜひ行ってみたいの。日本にはない風景が見られると思う。と母に話した時のこと。
「巡礼路なんだから、もっと本当の苦労を知ってから行くと良い。自分の命に代えても惜しくないと思うような人間を、どうしても救うことができない身を切られるような苦労を知ってから。己の無力さを嫌というほど思い知ってから。そうしたらきっと、景色が違って見えるから。」と、彼女は言った。
今日は、母の命日で、仕入れの途中、麦畑のひなげしがきれいだった。