やまなし。
宮沢賢治の童話にありますね。
クラムボンはわらったよ
クラムボンはかぷかぷわらったよ
沢ガニの子供たちの会話です。
黒い円い大きなものが、天井から落ちてずうっとしずんで又上へのぼって行きました。
キラキラッと黄金(きん)のぶちがひかりました。
『かわせみだ』子供らの蟹は頸(くび)をすくめて云いました。
お父さんの蟹は、遠めがねのような両方の眼をあらん限り延ばして、
よくよく見てから云いました。
『そうじゃない、あれはやまなしだ、流れて行くぞ、ついて行って見よう、ああいい匂いだな』
なるほど、そこらの月あかりの水の中は、やまなしのいい匂いでいっぱいでした。
やまなしの木の下は、熟した実の甘い香りがたち込めて。
その匂いにつられてやってきたアカンバチがブンブンしてる。
驚くほどの速さで、色んなものが変わっていくけど。
この香りとこの音は、私が子供のころから少しも変わらない…といつも思うのです。